口一杯に素麺を入れた時の食感はムワッムワッ

久しぶりに素麺を食べた。
これがなんとまあうまい。

小さい頃、夏休みに素麺が食卓に現れるのが嫌で嫌でしょうがなかった。何度も現れるからというのではなく当時の僕にとっては素麺の味があまりに素っ気なく感じられつまらなく、義務感で口に運んでいた。

そこに楽しみは見出せなかったので早く食べ終わろうと口一杯に素麺を放り込むことが多かった。その時に何度も体験した食感を今日思い出した。
ムワッムワッだ。おそらく素麺以外にこの食感はないのではないだろうか。久々の対面に思わず頬がほころぶ。

そして食感以外の素麺のよさが今はわかる。
まずはその真っ白な色だ。白いTシャツ同様、夏によく似合う。ただ器が白いと素麺の白さが映えないので器は違う色、できれば濃紺がいい。僕は白い器しかなかったのでトマトやオクラといった夏野菜を添えることで鮮やかな白を際立たせることができた。添え物があることで華やぎ一層美味そうにみえる。

めんつゆは冷蔵庫に常備していた2倍濃縮のものをつかった。親子丼などの和物に入れてやることでずっと美味くなるのでメインの調味料の一つだ。だが「めんつゆ」と呼ばれるように本来は麺のためのつゆと大きな役所だったのに他の料理の調味料に成り下がらせてしまっていたことに気づき、少々申し訳ないと思った。
今日はたっぷり、めん(のための)つゆとして使ってやるかと思って多めに注ごうとしたが、結局使い切れず流しに行くめんつゆのことを考えて相応の量にすることにした。

茹で上がった素麺をザルに移し湯を切る。用意した氷水に入れる。なんとも涼しいひと時でこのまま食卓へ運びたくなるが以下に習い、素麺だけをザルに戻し再び水を切る。

氷水に浸したままだと素麺が素っ気なくなってしまうとのこと。(そういえば小さい頃の素麺は氷水で浸されたままだった気がする)

夏野菜とともに綺麗に盛られた素麺は嫌が応にも食欲がわく。めんつゆにつけて一気にすする。冒頭に述べたようにこれがなんとまあうまい。特に喉越し。うどんも真っ白だが夏に食べたいと思ったことがない。この素麺の喉越しにはどうやっても叶わないのだから。素麺が夏の食べ物である所以を再確認した次第であった。

ただそれは裏を返せば夏以外に素麺は食べられないということでもある。素麺を出している店がないのがいい例である。
噂では20年後には手延べ素麺の職人がいなくなるとのこと、警鐘を鳴らすのはソーメン二郎

名前はかなりふざけているが三大素麺・三輪素麺の家系らしく、素麺業界を盛り上げようと奮闘中らしい。
確かな家系でありそれなりに想いもありまた行動力もありそうなので名前を除けば信頼できる人かと思う。

そもそもなぜ機械ではダメなのか。
http://ww81.tiki.ne.jp/~shiomi/tesagyou.html
伸ばす時間の長さだったり、塩加減だったりらしい。


素麺あれやこれや調べるのも飽きたので、片付けをしに台所へ向かった。鍋には素麺の茹で汁がまだ残っていた。
指を差し入れ、その指の先を口にいれる。
滑りと塩をほんのりと感じた。